すばる戦略枠提案FastSoundに関する審査報告

2012年4月27日

すばる小委員会

委員長 吉田道利

すばる望遠鏡主焦点ファイバー多天体分光器FMOSを用いて、銀河の赤方偏移を測定し、z〜1.3ー1.5の赤方偏移空間歪曲(Redshift Space Distortion; RSD)を検出し、これをもって宇宙の構造成長速度を直接測定しようというFastSound提案は、戦略枠の趣旨に合致したものであり、すばる戦略枠第2回公募の採用課題とする。

 FastSound提案は、2011年5月20日のすばる小委員会において仮採択されたが、本採択に当たっては、FMOSの装置性能の確認や、輝線検出率の定量評価と検出率向上への努力を行うことなど、いくつかの条件を満たすことが必須とされた。これを受けてFastSoundチームによって2回の試験観測が行われた。それぞれの結果と計画遂行に向けた展望について、SAC・TACによるFastSoundチームへのヒアリングおよび審査を行った結果、本採択への条件はすべて満たされたことを確認した。輝線検出率に関しては、当初予想より多少の効率低下が認められるものの、十分に計画目標を達成できるレベルにあるとの評価に至った。この分野における世界的な研究動向を鑑みて、早急に計画を進めることの重要性も認められた。

 したがって、FastSound提案を戦略枠課題として本採用する。ただし、以下の条件を付けるものとする。

1.採択夜数は40夜とする。ただし、今後(2012年5月以降)は、すでに試験観測で使用した夜数(11夜)は差し引いた29夜を割り当てるものとする。

2.公募案内にある通り、年1回の審査委員会によるレビューを実施し、データの取得状況、解析状況、観測目的の達成率などを厳重に監視する。必要であれば、 計画打ち切りの場合を含む中間見直しを行って、以降のプログラム割付に反映させる。

3.戦略枠への専念義務については、公募要項記載のとおり、PIのみに専念義務を課す。PIは戦略枠が実施されている期間は、一般共同利用への応募はできない。