観測成果

星をふらつかせる未知の天体は惑星?恒星?

2016年9月7日 (ハワイ現地時間)

  総合研究大学院大学の大学院生を中心とする国際研究チームが、すばる望遠鏡を用いて、太陽より重い「中質量星」に分類される恒星のまわりに次々と伴星を発見しました。これはすばる望遠鏡による観測で、明るい主星のすぐそばにある暗い伴天体を見いだす優れた性能が得られたおかげです。今回の観測では、うみへび座ガンマ星、HD 5608、HD 109272 という3つの星に伴星が直接検出された一方で、りゅう座イオタ星、いるか座 18 番星、HD 14067 の3つの星には同程度の伴星が見つかりませんでした。惑星形成理論から予測される惑星などの伴天体の数や分布を、今回のような観測の結果と比べることが、惑星形成理論の検証と理解につながるのです。


図1

図1: 黄色い丸で囲んだ中の点のように見えるものが、今回の観測で発見された伴星。白い丸または四角の部分に主星があります。明るい主星のそばにある暗い天体を検出するために、主星を隠して観測しました。(クレジット:国立天文台)


系外惑星系に遠方天体はどれだけいるのだろう

  1995年以降、太陽系外に多種多様な惑星系が続々発見され、それらの姿が太陽系とはかなり異なることがわかってきました。このため、太陽系を手本にして作られてきた惑星形成理論が、大きく見直されつつあります。惑星のでき方を示すいくつもの理論の中で、どれが妥当であるかを確かめるためには、その理論で予想される「恒星からどれくらい離れた位置に、どれくらいの重さの惑星が、どれくらいの数あるか」という惑星頻度を、観測と比較するという方法があります。とりわけ、遠方の軌道をめぐる惑星 (遠方惑星) の存在は、モデルを見分ける上で決定的な役割を果たします。

  ところがそうした遠方惑星を見つけることは、簡単ではありません。たとえば視線速度法 (注1) により多くの系外惑星が発見されてきました。しかし恒星から離れた位置にある遠方惑星は、恒星を一周りする軌道周期が十年以上と長いため、この検出方法では難しくなります。観測期間が限られている場合、遠方惑星が存在していても同じようにほぼ直線的な変動となります。さらに外側を恒星がまわっている場合でも同じような変動を引き起こすことから、この2つの区別をつけることができません。遠方惑星の検出が苦手なことは、系外惑星を見つけるうえで最近目覚ましい成果を挙げているトランジット法 (注2) でも同じです。

  このような視線速度法の特性から、主星からの距離が 10 天文単位 (1天文単位は地球と太陽の間の距離) より遠く、公転周期が数十年になる遠方惑星がどれくらい存在するのかということがわかっていませんでした。多様な系外惑星を含めた惑星形成理論のどれが正しいかを検証するためには、この遠方惑星の頻度を明らかにすることが重要ですが、そのためには視線速度法に加えて「直接撮像観測」を行うことが切り札となります。


直接撮像によるアプローチ

  直接撮像観測は、暗い惑星自身の光を「直接」に検出しようという観測方法です。主星から遠い天体を検出することに向いており、かつ、惑星よりも明るい伴星が存在していればほぼ確実に検出することができます。つまり直接撮像観測を組み合わせることで、視線速度法だけではわからなかった長周期視線速度変動の原因を明らかにすることができます。

  国立天文台岡山天体物理観測所では、東京工業大学の研究チームが 10 年以上にわたり太陽の 1.5 から5倍の重さを持つ中質量について視線速度法による惑星探査を行って来ました。比較的周期の短い惑星や褐色矮星 (惑星より重いが恒星より軽い星) が、これまでに 30 個以上見つかっています。一方、この探査を進めるにつれ、図2のように長い間にわたって視線速度が変化するケースがいくつか見つかっており、その原因は視線速度法だけではわかりませんでした。


図2

図2: 視線速度変動が見られる天体の一例、うみへび座ガンマ星。横軸はユリウス日で観測日を表し、縦軸は観測された視線速度を表します。(クレジット:国立天文台)


  研究チームでは、すばる望遠鏡における直接撮像惑星探査プロジェクト SEEDS の一環として、上記のような長期にわたる視線速度変化を示す中質量星のうち6天体を、すばる望遠鏡に搭載された赤外線カメラ HiCIAO (ハイチャオ) を用いて直接撮像観測しました。HiCIAO は明るい恒星を隠して観測することができるので、周辺にある暗い天体を見つけやすくなります。その結果、うみへび座ガンマ星、HD 5608、HD 109272 の3天体でそれぞれ伴星を発見しました (図1)。一方で、りゅう座イオタ星、いるか座 18 番星、HD 14067 の3天体では太陽の 100 分の1よりも重いような伴星は見つかりませんでした。

  さらに視線速度データと直接撮像の観測結果を組み合わせて詳細な解析を行ったところ、これらの伴星が主星の速度変動を引き起こしていることを確認しました。また、伴星が見つからなかったりゅう座イオタ星と HD 14067では、もしあるとしても太陽質量の 10 分の1以下の恒星であることが示唆されました。こうして遠方惑星が存在する可能性が残ったのは、いるか座 18 番星のみでした。

  研究チームは、今回伴星が見つからなかった天体について、HiCIAO の性能を向上させ、さらに内側の天体を検出できる SCExAO (スケックスエーオー) という装置をすばる望遠鏡に搭載して観測を行うことにより、伴天体の存在およびその重さの見当がつけられると期待しています。このような長周期視線速度変動を示す多数の天体に対して直接撮像観測を行い、伴天体の存在を確認することにより、遠方惑星がどんな割合で存在しているか、いわば人口分布を明らかにしたいと、研究チームは意気込んでいます。


  この研究成果は、アメリカ天文学会の天体物理学誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2016年7月10日付で掲載されました (Ryu et al. 2016, "High-contrast Imaging of Intermediate-mass Giants with Long-term Radial Velocity Trends")。またこの研究成果は、科学研究費補助金 JP25247026、JP15H02063、JP22000005 のサポートを受けています。



(注1) 視線速度法
星の視線速度を測定することで、主星と惑星が共通重心を公転する際のふらつきを検出し、その周期的な変化を検出することで惑星を発見する方法です (図3左)。惑星自身からの光を観測しているわけではないので、間接的な方法です。主星から遠いところに伴天体が存在していた場合、観測期間が短いと図3右のようにほぼ直線的な視線速度変動が見られます。


図3

図3: 左図のような主星の周期的な視線速度変動は、惑星が存在するサインとなります。一方で伴天体が 10 天文単位 (10 AU) より遠方にある場合には、速度変化の周期が長いため、右図のように直線状の速度変化を示します。(クレジット:国立天文台)


(注2) トランジット法
系外惑星を見つける主な方法の1つ。太陽のような恒星のまわりを回る惑星が、観測者から見てその恒星の前を通る際に星からの光をさえぎることにより、観測される星の明るさがごくわずかに暗くなる様子を調べるものです。星の明るさを正確に測る技術を必要とします。惑星が1周する時間が短いほど、変化を繰り返し測定できるので、恒星の近くにある惑星ほど検出しやすくなります。





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