観測成果

オリオン座の暗黒星雲に、多数の新たなハービッグ・ハロー放出現象を発見

2010年9月22日

 ハワイ大学マノア校のライパース教授率いる研究チームは、すばる望遠鏡主焦点カメラ (Suprime-Cam) を用いて、オリオン星雲の少し南に位置する巨大分子雲 Lynds 1641の観測を行いました。盛んに星が生まれているこの領域を高解像度で暗い天体まで撮影することに成功したのです。

 ハービッグ・ハロー天体とは、星形成領域内に斑点のように見られる淡い星雲状のものですが、この領域に多くの明るいハービッグ・ハロー天体がみつかりました。ハービッグ・ハロー天体が明るく見えるのは、新しく生まれた星からの超音速で放出される物質が周囲の星間物質を通り抜けるときに発生する、強い衝撃波によるものです。

 このような放出現象 (ジェット) は、生まれたばかりの星がその材料となる塵とガスにまだ包まれているような、星形成の初期段階で起こります。新たに発見された11個のジェットは、これまでに発見されていたものよりも淡く暗いため、すばる望遠鏡の広域を撮影できる主焦点カメラ (Suprime-Cam) と、多くの光を集めることの出来る 8.2メートルの鏡のコンビネーションにより、初めて撮影できました。新たに発見されたジェットは、星形成初期段階にある塵とガスの繭をすでに大部分脱捨てた段階の星で起こっており、非常に驚くべきことです。

 新しく見つかったジェット現象を説明するためには、今のところ2つの説があります。質量放出現象の最終段階を示している、もしくは、連星系内の近接通過によって星周円盤が乱されることにより起きた、というものです。

 この論文はThe Astronomical Journal 誌に掲載されます。以下のリンクからも電子版がご覧になれます。 http://www.ifa.hawaii.edu/publications/preprints/10preprints/Reipurth_10-104.pdf

 研究チームは、これらの予想されていなかったジェットの性質や起源について、今後さらに詳しい研究を続けます。


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図1: 主焦点カメラ(Suprime-Cam)で撮影された巨大分子雲 Lynds 1641。今回の発見されたジェットはこれまでに発見されていたものよりも淡く暗いため、すばる望遠鏡の広域を撮影できる主焦点カメラ(Suprime-Cam)と、多くの光を集めることの出来る8.2メートルの鏡のコンビネーションにより、初めて撮影できました。上の3枚の写真は図1の拡大図です。




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