観測成果

おうし座の若い連星から噴き出すジェットを発見 ─すばる望遠鏡で捉えた生まれたての星の姿─

2007年9月25日

この記事は神戸大学のプレスリリースを転載したものです。


【概要】

  神戸大学や国立天文台などの研究者らがすばる望遠鏡のコロナグラフ撮像装置を用いて行った研究より、おうし座にある若い連星からジェットが噴き出していることを発見しました。

  星の約半数以上は連星として誕生します。誕生したばかりの若い星、特に単独星には、ガスが噴き出す「ジェット」現象が見られます。しかし、連星の周りの構造は複雑なので、その様相は明確でありません。

  われわれは、おうし座 XZ 星の主星から噴き出すジェットを初めて発見しました。この連星に対してはハッブル宇宙望遠鏡の観測から、伴星からジェットが出ていることがわかっていました。

  この成果は、主星と伴星の両方が星周円盤を伴っていることを示唆しています。従って、どちらの円盤からも惑星が誕生する可能性が考えられます。


【研究内容】

  誕生から百万年程度の若い星には、「ジェット」を噴き出す姿が数多く見られます。ジェットの存在は、原始惑星系円盤の存在を示唆しており、この円盤から地球や木星のような惑星が誕生すると考えられています。しかし、中心の星が非常に明るいために、ジェットなどの構造を直接観測することは非常に難しいことでした。

  近年になって、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡を始めとする地上大型望遠鏡によって、単独星の周りに存在する構造の直接撮影が少しずつ増えてきています。ところで、星の半分は太陽のような単独星、もう半分は連星 (3重連星を含む) であり、単独星に比べて連星の星周構造は複雑です。例えば、単独星の周りに存在する原始惑星系円盤は1つであるのに対して、連星系には2種類の原始惑星系円盤があります。それらは、各々の中心星の赤道面に存在する星周円盤と呼ばれる原始惑星系円盤と、連星を覆うように存在する周連星円盤と呼ばれる円盤です。

  連星系に存在する星周構造の直接撮像は大変珍しく、これまでに数例のみというのが現状です。単独星と連星では、星や惑星の形成、進化にどのような違いがみられるのかということは明確ではありません。

  神戸大学、国立天文台、名古屋大学、総合研究大学院大学などからなる研究チームは、すばる望遠鏡用赤外線冷却コロナグラフ撮像装置と波面補償光学装置を用いて、おうし座星形成領域にある多数の若い星を撮影するプロジェクトを進めています。コロナグラフを用いて中心星の光を遮ることで、その周辺の暗い天体や構造を検出することができます。また、地球大気による星像の乱れを補正する補償光学を組み合わせることで、0.1 秒角以下という高解像度の観測を達成しています。

  上記プロジェクトの一環として、連星であるおうし座 XZ 星を、近赤外線 (波長 1.6 マイクロメートル) で観測し、この主星から噴き出すジェットを撮影することに初めて成功しました。なお、可視光線 (波長 0.68 マイクロメートル) によるハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測から、伴星から噴き出すジェットは見つかっていました。

  可視光線や近赤外線の観測では、中心星からの光がジェットを構成している塵に反射している光を捉えることができます。注目すべき点は、主星と伴星の両方からジェットが噴き出しているということです。このような様子は、おうし座 T 星と呼ばれる若い連星でも観測されています。

  ジェットの存在は、星の周りに原始惑星系円盤があることを示唆しています。従って、このような連星系では、主星と伴星両方の周りに惑星が誕生するかもしれません。今後、様々な連星の星周構造の直接撮影がより高解像度で行われることによって、 連星における星や惑星の形成、進化の起源に迫ることができると期待されます。




 

 

 

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