ハワイ観測所の取り組み
共同利用と教育活動
共同利用観測
国立天文台は、世界最先端の観測施設を擁する日本の天文学のナショナルセンターです。大学共同利用機関として全国の研究者の共同利用を進めるとともに、共同研究を含む観測・研究・開発を広く推進し、天文学および関連分野の発展のために活動しています。 すばる望遠鏡では年2回、共同利用観測プログラムを公募しており、外部機関のメンバーも含む委員会が観測提案 (プロポーザル) の中から科学的に意義が高く、すばる望遠鏡に適した観測プログラムを採択します。国内外から多数の応募があり、近年の競争率は3−4倍ほどです。
データアーカイブと計算機
すばる望遠鏡は大容量のデータアーカイブシステムを備えており、高速ネットワークで結ばれています。マウナケア山頂の山頂施設、ヒロ市内の山麓施設、東京都三鷹市にある国立天文台本部は、専用のネットワークでつながっています。
日本にいる研究者は、この高速ネットワークでを用いて、山頂施設にいるのとほぼ同じようにデータにアクセスし、観測を実行することが可能です。
観測データは、取得後1年半は観測提案者が占有することができますが、その後は世界中の研究者に公開されます。ハワイ観測所はそのためのアーカイブシステムや計算機を整備し、観測データが最大限に活用されるように努めています。
次世代の研究者の養成
すばる望遠鏡は、次世代の研究者の研修・育成の場でもあります。総合研究大学院大学 (総研大) などの大学院生がハワイ観測所に滞在して、観測天文学や装置の開発研究に携わっています。また、大学生向けの観測体験企画やテレビ会議システムを使った授業、地元の高校生・大学生インターンの受け入れも行っています。
三鷹キャンパスでの活動
国立天文台三鷹キャンパスにある「すばる室」では、共同利用観測の運用や研究者のデータ解析支援、教育活動を行っています。
保守・開発作業
望遠鏡の保守作業
副鏡や観測装置の交換をはじめとする望遠鏡の保守作業は、望遠鏡技術部門や装置部門のエンジニアやデイクルーなどによって計画的に行われます。これにより、毎晩の観測で最大限のパフォーマンスを発揮できるように、すばる望遠鏡を保守しています。
さらに数年に一度、数ヶ月間のダウンタイムを設けて主鏡の再蒸着や望遠鏡の大規模なメンテナンス作業を行うことで、すばる望遠鏡が常に天文学研究のフロンティアで活躍できるよう、力を尽くしています。
観測装置などの開発
ハワイ観測所や日本国内外の機関で作られた観測装置は、望遠鏡に取り付けた際の動作を最終的に確認するための望遠鏡シミュレーターに取り付けられ、試験を受けます。ハードウェアとしての性能はもちろん、データ通信や操作性なども試験され、合格となると実際に山頂に運ばれます。
近年は、2400 本もの光ファイバーを使って広範囲に分布する天体の可視光〜近赤外線スペクトルを一度に数多く取得する画期的な主焦点観測装置 PFS の受け入れ準備も進められています。
広報活動
地元でのアウトリーチ活動
アストロ・デー
年に一度、マウナケアの天文台群がヒロ市内のショッピングモールを会場として、合同の展示およびデモンストレーションを行うイベントです。
子供むけ科学教室
ハワイ島出身の宇宙飛行士、エリソン・オニヅカ氏の命日を記念したオニヅカ・サイエンス・デーなどの科学教室が、ハワイ島内で1年間に複数実施されます。このときにもスタッフを派遣し、子供向けの工作・実験・観察教室や、観測所の展示などを行っています。
学校訪問
先生方のリクエストに応じて、観測所スタッフが教室で出前授業を行っています。マウナケア山頂の天文台群所属のスタッフが1週間で多数の学校訪問をこなすジャーニー・スルー・ザ・ユニバースという行事には、毎年ハワイ観測所から多くの研究者が参加しています。
講演会
ハワイ大学ヒロ校、マウナケア中腹のオニヅカ・ビジターセンター、イミロア天⽂センターなどで、ハワイ観測所スタッフが随時天文学の講演を行っています。
すばる望遠鏡 遠隔講演
山麓施設とハワイ島や日本の学校や科学館などをテレビ会議システムでつなぐことにより、ハワイ観測所のスタッフによる遠隔講演や遠隔授業を行っています。